2003年12月 | ARCHIVE-SELECT | 2004年02月

| PAGE-SELECT |

≫ EDIT

その5)マネー・ドキュメンタリー 『俺の1800万円どうしよう?』


第2章
その1)

入院するとは隔離されることだ。
患者になったとたん、年齢も身分も肩書きも、関係なくなる。

三度の食事が時間の区切りになるが、
それ以外は基本的に何もやることがない・・。

患者同士が話すことといったら、
自分の病気のことと天気のことくらいだ。

日常生活は、たとえるなら
ベルトコンベアーのようなものだ。

今日の次にはもう明日が載っていて、
明日の次に、明々後日が来る。

仕事や雑事に追われていれば、
時間は過不足なく過ぎて、
人はベルトコンベアーで自動的に
未来に運ばれることになる・・。

ところが、怪我をして2ヶ月以上、
ベッド上での生活を強いられると、
ベルトコンベアーから一時、離脱させられる。

なかなか明日も来週もやってこないのだ。

ベッドから天井を見上げてみる。
また、座った姿勢で
ベッドの上から病室を眺めてみる。
「何も見えない・・。」

あり余る時間の中で、
自分の今までの時間が右側に、
これから先の時間が左側に、
透かして見えてくるような気がする。

今回の入院では、もう本当に
ワタルに頭が上がらなくなった。

オレの借金を
オレに代わって支払ってくれたばかりか、
金まで貸してくれた。

(まあ、あいつのところは
家が裕福だから少しは気が楽だか・・)

それに、今回のことでは
職場のみんなにも感謝している。
まさか社長さんまで
お見舞いに来てくれるとは思わなかった。

オレは今回の入院で、少し内省的になった。
ほとほと今までの自分がイヤになった。

オレが働いているような零細工場の場合、
怪我をして入院したりすると、
「悪いけどクビだ・・」
と言われてもまったく不思議ではない。

でも先日、専務さんに
「岡本くんが回復するのを待っているから、
しっかり治して・・」と言われた。

大げさではなく「救われた」と思った。
オレは是が非でも
ちゃんとしないとダメなんだと思った。

主治医によると、
オレの左足はかなり複雑に折れていて、
以前のように走ることは出来ないらしい。
それは全然構わない・・。

やっかいなのが左足の人差し指で
この骨については、完治は難しいと言われた。
オレは退院後、左右のサイズが違う
特注の靴を履くようになった。

はたから見ると、
若干左足を引き摺っているように見える。
でも、そんなことは全然構わない・・。

リハビリを経て、
5ヶ月ぶりに仕事に戻れたことに
オレは正直ほっとしている。

しかしこのあと、
もっと大きな出来事が降りかかってくるとは
夢にも思わなかった・・。




関連記事

| コンサルティングのお知らせ | 15:31 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

その4)マネー・ドキュメンタリー 『俺の1800万円どうしよう?』


 その4)

工場内の灯りは窓から差し込む光と相まって
白く輝いて見える。
午後になって、それぞれの持ち場が変わった。

オレはヒールの圧着をしながら、
池さんに本体の圧着を頼む・・。

だいぶ靴が溜まってきたので、
ノブオと来たばかりのバイトの斉藤くんに
型抜きを急いでもらう。

ふたりはオレが知らないバンドの名前で
盛り上がっていた・・。

「池さん。圧着終わったら、
あとで中底打ちお願いします。」
池さんは蚊の泣くような声でおう、と言う。

トーラスター、つまり、
甲皮の貼り付けを終えたゲンさんが、
型抜きを始めたとたん、叫んだ。

「おい、この本底、型番763じゃねえか!」

ゲンさんは叫んだついでに、
釘打ちから、窯入れから、グラインダー削りから、
すべての作業を止めさせる。

オレは型抜きを終えた靴を見た。

よーく見ると、たしかに、
土踏まずのところが微妙にずれている。
ほんの少しだけ、
本体に比べて底の面積が少ないのだ・・。

形がよく似ているため、
型番763の本底を、型番762と間違えて、
専務さんが段取りしてしまったのだろう。

「おい、翔太。ちょっと専務さんに確認してこい!」
オレは事務所に走った。

ゲンさんは貼工さんたちの手を止めさせ、
型番762の本体の一部に、
型番763の本底が貼られたことを告げる。

オレは専務さんと一緒に、
すでに段取りが出来ている
型番763のカゴをサイズごとに確認して回った。

本底を調べてみると幸い、
型番763と型番762が入れ替わっていたのは、
23センチと、23.5センチだけだった。

しかし、間違えて作ってしまった本底をはがし、
型番762の本底に貼り換えないといけない。
現場では貼工さん達が文句を言っている。

「ゲンさん、間違って貼った分も
ちゃんと足数に数えてくれるんだろうね。」

「それは専務さんと相談して、ちゃんとするから」

「何が相談だよ。
そんなことなら今日はもう貼らないよ!」
「そう、かっかするなよ」

ゲンさんがまたオレに目配せする。
再び事務所に走って専務さんに事情を説明する。
専務さんは伝票を手に、
ひとりひとりの貼工さんに説明して回った。

「足数は間違っていた分も含めて、
すべてカウントしますので・・。ほんとうにすみません」

バイトの斉藤くんはきょとんとした顔をして、
事の成り行きを見守っている。
池さんは相変わらず、中底打ちを続けている。

ほんらいは型番762が終わって、
型番110を貼っている時間だが、
この様子だと大幅に遅れそうだ・・。

ゲンさんは型番110のトーラスターにかかり、
オレが型番762の残りをひとりでやることになった。
ちょうど体に疲れを感じる時間帯に、
オレは目一杯動いて、現場の遅れを取り戻そうとする。

ラスト(木型)の音もヒールの圧着音も、
もはや気にならない・・。
工場内の音はやがて小さくなり、
空気が膜を作ったように見えてくる。

オレの体がひと回り軽くなって、
膜の空間に浮かんでいるようだ。

久しぶりに夜食を頼んで、みなでラーメンを食べる。
そして、21時過ぎにようやく仕事を終えて、
オレはバイクに跨った。

「お疲れサン。」
「お疲れさまです・・。」

夜はどっぷり暮れている。
仕事が終わると、
みな、職人という衣を脱いで素に戻っていく・・。

それにしても専務さん、どうしたんだろう。
疲れているのだろうか・・。

いや、それより明日の事だ。
池さんはまた休みそうな雰囲気だったし・・。
明日は木曜だから、斉藤くんが来ない日だ。

明日の段取りのことを考えていると、
だんだん気が重くなってくる。

それにしても、
貼工の山中さんのあの言い様はなんだ。
あれじゃあ、最初から喧嘩ごしじゃないか・・。

オレは少しずつスピードを上げながら、
量販店やファミレスが並ぶ幹線道路を走り抜ける。

だいたい、貼工さんは
自分たちの足数のことしか考えていないし。

それに、専務さんも、
あんなにぺこぺこ謝る必要なんかないのに・・。

オレは駅前のショッピングセンターを越え、
線路を渡って2車線の県道に入った。

やっぱり明日は、
製品場からヘルプ来てもらおうか・・。

次の信号を見ながら、
足の位置を入れ換えたとたん、
横手の細い道からワゴンが飛び出してきた。

オレはドンッという衝撃を感じて、
目の前が一瞬真っ白になった。
オレの体が斜め前方に飛んで、
対向車のトラックと接触する。

そのとき、俺の左足が
トラックの前輪に巻きつくような形になったらしい。
そのときの痛みを、オレはかすかに覚えている・・。

交通事故の当事者になったのに、
オレはそれがまだうまく飲み込めないでいた。

意識が覚醒してきて、
全身に痛みを感じ始めたのは、病院に着いてからだ。

オレはさっきからウォーウォーと
土の中にいる小動物のように呻いている。
それにしても、とんだことになったな。

レントゲンを撮られ、MRIを撮られ、
数時間待たされたあげく、手術ということになった。

おれは痛みで意識が朦朧としていたが、
手術の許諾のサインが要るという。
オレは右手で字にならないオレの名字を書く。

手術は5時間かかって終わったらしい・・。




関連記事

| コンサルティングのお知らせ | 18:00 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

その3)マネー・ドキュメンタリー 『俺の1800万円どうしよう?』


その3)

朝起きて、バイクに乗って仕事に行く。
道の込み具合にもよるが、工場まで20分もかからない。

オレはコンビニでパンと牛乳を買って、
いつも現場の控え室で食べている。
「オハヨッス。」

控え室はいつものように煙草の煙で溢れていた。
オレは、煙草は吸わない。
でも、けむたいのは別に気にならない・・。

この控え室には
マンガ、週刊誌が山積みされている。
ノブオがギャクマンガの全巻(1~60巻)を寄付してくれ、
それが今では一番人気だ。

オレは控え室の時計を見ながら思う。
仕事をしているときは、それに集中するが、
仕事の直前というのは、ちょっと憂鬱になるものだ。

ひとつの可能性として、
「ここではない、どこかに、もしすべり込んでいたら・・」、
そういうことを時々考える。

もし、他にすべり込める場所があったとしたら、
それはいったい何処なのか・・。

今とは違った可能性があり、
まったく違った「道すじ」が浮かび上がり、
そちらに向かって歩いている、
「今のオレとは違う自分」を想像してみる・・。

「そろそろ行くぞ!」
ゲンさんがみんなに声を掛ける。

仕事をしているときは、
余計なことは考えないが、
仕事が終わり、ひとりで晩めしを食べているとき、
無性に恥ずかしくなることがある。

33歳にもなって、
その日暮らしで、
おまけにお金のことでは文字通り毎日綱渡りで、

オレの日常は八方が塞がっているのだが、
不思議なことに、
時間という「抜け道」だけが
ずっと先のほうまで続いている。

できるだけ事を深く考えず、
うまくやり過ごして、
その日、その日を暮らしていく・・

多分オレは、
時間の流れに乗ることに集中しているのだ。

まるで、
ハムスターが滑車で回り続けているのと同じだ。

今しがた、ちらっと感じた
恥ずかしいという感覚は、
不思議なことに、
しばらくすると日常の中で溶け始める。

そして、気付かないうちに蒸発して、
最初からなかったような錯覚に陥る・・。
これが「諦める」ということの中身だ。

工場内は、さまざまな光で溢れている。

今日は池さんも来ているし、
現場はなんとか回りそうだ。
15時になれば、バイトの斉藤くんも来る。

「もしかすると、今日は500足いけるかもな。」
オレはノブオに呟いた。

「翔さん、この前、ボクのボトル飲んだでしょ?」
ノブオは的外れなことを言う。

ウィーンという低い音を立てて機械が起き上がる。
ゲンさんがトーラスターの機械を入れて、
現場の朝が始まった。

ここではいろいろな音が奏でられる。
貼工さんが中底をトントンと叩く低い音。

トーラスターが甲皮を挟む規則正しい音。
あるいは、
ヒーター(窯)に通した靴の中底部分を、
グラインダーで削る音・・。

ラスト(木型)のカラコロという高い音が
工場内に響き渡る・・。

スーパーの売り場と同じように、
靴の製造現場も左回りで靴が流れていく。

1回目の休憩のとき、
ワタルが現場に遊びに来た。

ワタルが働いているのは、
俺達が勤めている工場の1階下だ。
ワタルは裁断場で甲皮の裁断をしている。

裁断とは、抜き型を使って、
靴の上半身、つまり甲皮部分を
ひとつひとつ裁っていくことだ。

抜き型そのものは鋭利な刃物だから、
よそ見をしながら、
ガッチャンとやってしまうと指が飛ぶ・・。

靴は3つのパートに分かれていて、
要は、上と、真ん中と、下だ。

「上」の部分が甲皮と呼ばれる。
靴の上半身を覆う。

そして「真ん中」が中底だ。
靴の背骨のようなもの。

そして、「下」の部分が本底だ。
婦人靴の場合、ヒールも含まれる。

男物の靴は文字通り「製品」だが、
女物の靴は「流行商品」だ・・。

ファッションのトレンドや天候の変化に、
もろに影響を受ける。

旬の時期を逃すと、
とたんに売れなくなってしまうのだ。
したがって、納期はとても厳しい。
当然、俺達にもしわ寄せが来る・・。

仕事をしている間は、ダメなオレは姿を消す。
さまざまな音の膜に包まれて、オレは体を動かすのだ。




関連記事

| コンサルティングのお知らせ | 18:45 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

その2)マネー・ドキュメンタリー 『俺の1800万円どうしよう?』


その2)

さっきから、オレの後ろの台が気になっている。
「452番」だ。

打っているのは、商店街の真ん中で店を出している
惣菜屋か乾物屋のオヤジだ・・。

今日は夜8時にしては客の入りがいい。
オヤジの台の赤や緑のランプが点滅している。
また、ドラムの激しい音と共に音楽が鳴り出した。

さっきから連続している確変の「大当たり」だ。
たしかこの台は昨日も出ていたはず・・。

パチンコ店ではひとつの台が何日も連続で
大当たりの量産になることがある・・。

しかし、明日、どの台が出るかは
こちら側には分からないのだ・・。

オレはたいてい、
昨日、大当たりが少なかった台に座る。
また、今日の当たりが100以下のところには座らない。
そして、2000円出して感触がなければ、
すぐに別の台に移る。

もう、パチンコ店のこの椅子とも長い付き合いだ。

パチンコ店の空間には、奇妙な静寂がある。
機械音や玉が流れる音で店内は充満しているが、
それがいつしか膜のようなものを作り出す。

玉を打つオレはその膜に包まれる・・。

この空間には、
誰もが好きなときに入ってきて、
誰もが好きなときに出ていく・・。

そして、誰も口を利かない。
その必要がないからだ。

オレは盤面をひたすら見つめている。
音量が一気に上がった・・。
数字がチカチカ踊りだす。

最近の機種は、
長い時間をかけて盛り上がるので、
盤面を追いかけていると疲れてしまう。

オレがパチンコをする理由??
それはふたつだけだ。

1.時間潰しになる
2.もしかしたら勝てるかもしれない

時間を潰すために、何千円も払って、
しかも、最終的に負けて3万円すったとか、
「バカみたいじゃない!」と思うかもしれない。

でも、時にはただ同然で、
2時間も3時間も時間が潰せることがある。
そのうえ、勝つこともあるのだ。

パチンコは客への還元率が高いギャンブルで、
10回通っていれば、誰でも1、2回は勝てる。

オレは少し前まで
勝つことにかなり執着していた。
個別の機種の攻略法ソフトを買ったこともある。
(大して成果は出なかったが・・)

でも、今は
別に勝たなくてもいいと思ってしまう。

時間を潰すこと、
そして、勝てるかもしれないという
ワクワク感を買っていると思えば、
たとえ負けたとしても、安いものだと思う。

またリーチだ・・。
この、4○4の数字を見ていると、
台を設計した奴の意図が見えてくる。

いかにドキドキさせるか、
来そうで来ない、
でも、来るかも、という気にさせる
微妙なさじ加減を知っている。

気持ちをじらして、
しかも萎えさせないという点では、
パチンコはキャバクラと同じだ。

しかし、
オレもつくづく物好きな奴だな。
昼間は靴の現場で騒音にまみれ、
夜はパチンコ店で機械音にまみれている。

でも、音の洪水の中にいると
不思議と落ち着いてしまうのだ。

ワタルからメールが入った。
「メトロパート2、今日は出てるみたい。」
あいつも懲りない奴だ。
オレは「今日はそっちには行かない」とだけ
メールを返す・・。

今日もアパートに帰って、
シャワー浴びて寝るだけだ・・。

今日打った台の番号を自分にメールして
オレはパチンコ店を出る・・。




関連記事

| コンサルティングのお知らせ | 10:38 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

その1)マネー・ドキュメンタリー 『俺の1800万円どうしよう?』


第1章 その1)

いつものことだが、
ゲンさんは酔っ払うと理屈っぽくなる。
「バカ、さっきから言ってるだろ。20年後は必ず来るんだよ。」

ゲンさんの主張はこうだ。
若いうちしかお金は貯められない。
はやる気持ちに任せて、
今あるお金を全部使ってしまうのではなく、

いくばくかは、先のために取っておくべきだ。
それが利口なんだと・・。

オレはゲンさんの話を聞くふりをして、
スナック「理沙」のママの顔を思い浮かべていた。

俺たちのテーブルの後ろで
3人連れの女達がアヒルのような声で笑っている。
「あのー、こっちにウーロンハイ3つね!」

今日は午後からみんなでボーリングに行き、
そのあと焼肉で腹ごしらえして、
トマトの店に行って、それから理沙に行って、
今、湯豆腐だけが取り得の居酒屋にゲンさんと来ている。

だいたい日曜日の午前1時に、
酒場でくだを巻いている人間にろくな奴はいない。
(まあ、オレもそのひとりだけれど・・)

ゲンさんが店のオヤジと競馬の話をして
盛り上がっているので、
「オレは自分の金を馬になんか賭けないですよ」
と毒付いて見せた。

「バカ、賭けないうちは当たる確率ゼロだよ」

もう一杯生を飲もうとするオレを、
小さな自制心を持ったオレが引き止める。
店の中が一瞬、絵の具が滲んだように見えた。
そろそろオレも酔っ払ってきたようだ・・。

ゲンさんと別れてアパートに戻り、
シャワーを浴びた。
読みかけのマンガをぱらぱらめくりながら
ふと思い出す。
「・・月曜日はまた振込みだな。」

お金っていうのは、
目の前をすうーっと通りすぎていく。
次、また、向こうからやってくるまで
ひたすら待つしかない。

ただ、中には待てない奴がいて、
そいつは無理やりお金そのものを買ったりしている。

つまりは「借金」だ。

そいつが、オレだ・・。

オレは一応、仕事はマジメにやっている。
小さな工場だけれど、働き心地は悪くない。
毎日毎日、現場で靴を作っている。
それも婦人モノだ。

ショッピングモールで
2,990円とか3,990円で売っているやつ・・。

別に靴が好きなわけではない。
この仕事を始めたのもたまたまだ。
でも、長く居れば、
それなりに居心地がよくなってしまう・・。

布団の中に丸まりながら気付いた。
月曜日に全部振込みすると、
5万円程度しか残らない..。

そういえば、
来月はワタル達とスノボーに行くんだった。

また、頭の中でお金が素通りしていく。
オレはただ、それを見ているだけ・・。

考えてみるとここ何年も、
給料日に入金するのが日課になっている。
カード会社A社、消費者金融B社、C社。

オレに300万円の借金があるのを知っているのは、
たぶんワタルだけだ。

最初に「オレ、実は借金があるんだ」
って言ったときの、
ワタルのバツの悪そうな顔が忘れられない・・。

なんだか、
見てはいけないモノを見てしまったような
困った顔がそこにはあった。

「つうか、オレ平気だから」
「取立てとか、きつくないの?」
「いや、個人宛にしか電話来ないし」

話をしているオレよりも、
話を聞いているワタルのほうが、
つらそうな表情をしていた。

言うまでもないが、
お金に対する敏感度はみな違う。

ワタルのつらそうな顔を思い出し、
もっと困らせたいという邪心がもたげてくる。

「ワタル、先月からキャッシングの枠が増えたから、
オレ、もっと借りるわ。そいでスノボー楽しもうぜ。」
なんて言ったら、
ワタルはどう反応するだろう・・。

これは誰にも言えないが、
借金をしているオレ自身は、
奇妙な「安定感」を感じている。

だって、それは生活の一部と化しているから。

たとえば、駅に向かう通りを、
オレみたいに借金がある人間と、
貯金がある人間が並んで歩いても、
傍目には「どっちがどっちなのか」分からない。

「金を借りている」という事実は、
よっぽど深い仲にならないと普通分からない・・。
別に、自分の服に
「借金300万」とか書いているわけじゃないし。

お金を借りると、
焦ったり、気になったり、
よく眠れなくなったりする奴がいる。

それって、
要は線が細いんだ・・。
そんな奴はお金を借りるべきではない。

オレは次の日、昼過ぎまで眠っていた・・。




関連記事

| コンサルティングのお知らせ | 17:54 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

マネー・ドキュメンタリー 『俺の1800万円どうしよう?』


こんにちは。
インデックス投資アドバイザーの カン・チュンド です。

あなたは学生時代、国語のテストなどで
以下の文章(冒頭文)を
ご覧になったことがありませんか?

『山路を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。
意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。』

そうです、
1906年に発表された
夏目漱石の『草枕』の冒頭部分ですね・・。

この文章を読んで、
何となく「ほっとしてしまった人」、
手を挙げてください・・(笑)

要するに、人って
100年も前から、

「嗚呼、世知辛い世の中だ。
人の世というのは住みにくいものだなあ・・」と
悩んでいたわけです。

(私たちと「同じ」ように・・)

今も昔も
人の悩みの本質は変わらないという、
へんな「安心感」のようなものがありますよね。

【悩み】というと、
とてもヘビーに聞こえますが、

正確にいうと、
(日本では)100年ほど前から
人は【本格的に悩めるようになった】のです。

「??」

夏目漱石はおそらく、

○ 大きな世間の一部として、
人が含まれるのではなく、

【わたし】がいて、世間がある、という
自我(わたし)を独立させて日本人を描いた、
最初の作家であったと思われます。

【自我】・・
そうです、
あなたやわたしの、アレです。

自我】(大きなわたし)が芽生えるためには、
何より【自由】であることが必要です。
社会の豊かさや、成熟も要ります・・。

今日、あなたやわたしの【自我】は、
『小さな宇宙』のように膨らみ、
たえず「悩み」というものを醸成させています。

誤解を恐れずに言うと、
「自我」があるから、「悩み」が発露するのです。

これって酷なことなのでしょうか・・?

わたしは、
「悩める」って
ある意味、贅沢なことだと思っています。

お金についても、
昔は「お金がある」⇒ 「使う」
「お金がない」⇒「使わない」(使えない!)

そして四六時中
「お金が足りないよ!」と呟き、
人はしょっちゅうお金を借りていたわけです。

(金貸しは人類最古の職業のひとつ・・。)

ついでに申しますと、
私たちの先人はずっと「金欠状態」でしたから、

たとえば、
日用品を買うのも基本的には「ツケ払い」で、
年末にそのツケを支払う慣習があったくらいです。

つまり、
○ ヒトの歴史の99.9%は、
利殖ということとは無縁だったのです・・。

それが、この100年くらいで突然、
【お金が余る】という、
未体験ゾーンに突入してしまい、
大いに慌て、
おののいている状態なのではないでしょうか。

私たちは、
お金を使うという行為は
数限りなく行ってきましたが、

お金が余り、
お金が手元にある状況で、
お金と【向き合う】という経験は、
ほとんどしてこなかったのです..。

したがって、
【お金が目の前にドンとある状態に】
まだまだ慣れていないのが現実。

しかも、
お金をただ使う場合に比べ、
【目の前にドンとあるお金を】
どうするのか、

つまり、どう管理・マネジメントするのかは、
(言ってみれば)とても高度な行いです。

ある人は「計画性」が必要だといいます。
今現在の、あなたの心境だけではなく、

明日、来月、いや、
3年後、5年後のことをイメージして、
(つまり、未来をはっきり把握しながら)

今、このお金をどうすべきかを
【決定】しなければならないと説きます。

また、別の人は「度量」が必要だといいます。
今、目の前にドンとあるお金に負けない、
そのお金を制御し、手なずけるだけの器が
必要ということです。

まあいろいろと、
小難しいことを言いましたが、

平凡な男子が突然、
【目の前にお金がドンとある状態に】置かれたら
どうなるのか・・、

これをドキュメンタリータッチで
描いていきたいと思っています。

 マネー・ドキュメンタリー
『俺の1800万円どうしよう?』

乞うご期待!

似顔絵




関連記事

| コンサルティングのお知らせ | 10:54 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

| PAGE-SELECT |