新しい投資信託よりも、古い投資信託を知ることが重要な理由
こんにちは。
インデックス投資アドバイザーの カン・チュンド です。
あなたは中古のマンションと
新築のマンション、
どちらにより『魅力』を感じますか・・?
「それは新築でしょ!」
まあ、それはそうでしょうね(笑)
(何しろ)新しいですし!
しかし、よく考えてみますと、
すべての新築マンションは必ず、
『中古』になります。
新築の供給戸数がどれだけ増えようと、
これは同じことです。
(時間が等しく経過して)
新しいモノは『古く』なるわけですから、
戸数で云うと圧倒的に
『中古マンション』が多くなります。
投資信託の世界も同様です。
「あの新発売のファンドが・・」
と誰かが噂にした途端、
それは【既存のファンド】となります。
すべての新発売のファンドは、
必ず『既存のファンド』になりますから、
本数で云うと、圧倒的に
『既存』のほうが多くなるわけです。
何が言いたいかというと、
投資信託を深く理解するためには、
新しい投資信託よりも、
古い投資信託を知ることが
何倍も重要だということ・・。
たとえば、世の中には、
築15年のマンションは
わんさかありますね。
15年も経つと、
マンションってあまり
注目を浴びなくなるかもしれませんが、
15年の時間の営みの中に
さまざまな『歴史』を
内包しているもの・・。
投資信託も同様です。
運用歴15年の投資信託って、
普段あなたが
その存在を意識していないだけで、
(実は)けっこうたくさん存在します。
試しにモーニングスターの
【ファンド詳細検索】で、
運用年数15年以上と入力して
検索してみてください。
(人の人生と同じで)、
ファンドも
15年も運用を行っていれば、
これまで刻んできた『時間』の中で、
酸いも甘いも経験しているもの・・。
なんと云いますか、
ひとつの投資信託が持つ、
『時間の重み』みたいなものを
ときには感じてみて欲しいのです。
何しろ、
長期投資を続けた結果、
あっ、ワタシは
運用歴29年のファンドと
ずっと付き合ってきたんだ・・
みたいなことも起こり得るわけですから。

ひとつ『具体例』を挙げてみましょう。
先週の木曜日(23日)に、
アメリカのナスダック総合指数が
5,056ポイントをつけ、
15年ぶりに高値を更新しましたね。
「15年前といえば?」
そう、2000年のこと・・。
当時世の中は
「ITバブル」の渦中にありました。
そんな中、日本では
【ウォーバーグ・ピンカス日本小型株ファンド】が
運用を開始します。
このファンドの名前を聞いて
ピンときた方は、
相当長いファンド投資歴をお持ちのはず・・。
「ウォーバーグ・ピンカス日本小型株ファンド」は
2000年1月に運用をスタートさせて間もなく、
500億円を超える資金を集め、
順調な滑り出しを見せました。
順調な滑り出しを見せました・・。
順調な滑り出しを見せました・・・・・。
あれ?
滑り出しは順調だったようだけど、
その後はどうだったの?
んー、けっこう苦労したのですね、
このファンド・・。
(冷静に考えてみますと、)
ファンドの成績が
まったく存在しない
【新発売の投資信託】が、
○ 大きな宣伝を打ち、
○ 人を煽って、
○ 集められるだけの資金を集める
という【姿】は、
ちょっと胡散臭いですし、
滑稽にすら見えてきます。
(決して【新発売のファンド】は
買わないでくださいね・・)
「で、カンさん。
そのウォーバーグ・ピンカス日本小型株ファンドって、
今はどうなっているの?」
あっ、ちゃんと存在しています。
(【生きて】いますよ!)
⇒ しかし、このファンドは、
諸々の事情があり、
今は【アバディーン日本小型株ファンド】という
名前になっています・・。
アバディーン・・・?
はい。
とりあえず、
「アバディーン日本小型株ファンド」の3月末現在
「月報」(月次レポート)を覗いてみましょう・・。
当該ファンドは
2000年1月の運用開始当初、
『新発売・効果』もあり、
【純資産額】が500億円を超えたのですが、
ほどなく、
数あるたくさんの【既存のファンド】の
ひとつとなってしまいました。
(新築マンションが
『中古』になるのと同じ・・)
2000年の夏ごろには
ITバブルの崩壊が誰の目にも明らかになり、
当該ファンドの【純資産額】は、
どんどん右肩下がりになっていきます。
2015年3月31日現在、
当ファンドの【純資産額】は
たった71.4億円・・。
途中、2004年から2006年にかけて
【純資産額】が持ち直す兆しがあり、
200億円を超える時期もありましたが、
それは一時的な現象となってしまいました。
もう一度、
「アバディーン日本小型株ファンド」の
「月報」です。
【騰落率の表】を見ると、
(ベンチマークではないのですが)
参照指標のJASDAQと
当該ファンドの成績が比較できます。
(※ ここではTOPIXとの比較は割愛します)
1ヶ月 6ヶ月 1年 3年 5年 設定来
ファンド 6.9% 27.8% 51.0% 155.3% 177.2% -9.4%
JASDAQ 2.6% 5.3% 15.6% 107.3% 109.1% 15.6%
どうです?
直近5年では
当該ファンドが
JASDAQを上回る成績を残していますね。
(それも、直近1年、3年、5年と
コンスタントにです!)
しかし、設定来、
つまり、2000年来の
15年間余りの騰落率を見ると、
JASDAQを下回る成績となります・・。
「月報」内のグラフを見ると、
2002年から2008年にかけて、
ファンドの成績が(JASDAQと比べ)
芳しくなかったようです・・。
先ほど言いましたように、
15年も【運用履歴】があると、
良い時期も悪い時期も、
まあ、いろいろ経験しているもの・・。

しかし、
運用チームの方々の努力の結果、
直近5年の成績は良いわけですから、
もっと多くの人が
このファンドに注目し、
もっと多くの人が
当該ファンドを買付け、
その結果、
もっともっと【純資産額】が
積み上がっていても良さそうなもの・・。
(ちなみに、
当該ファンドは
モーニングスター Fund of the Year 2014の
『優秀賞』も受賞しています・・)
でも、
【純資産額】はやっぱり、
71.4億円・・。(3月31日現在)
これって、ちょっとおかしい?
(おかしいですよね。)
なぜ、なのでしょう?
答えはカンタンです。
ほとんどの人は、
【アバディーン・日本小型株ファンド】の
存在を知らないのです。
だいたい、名称を検索するにも、
名前自体が変わってしまっています。
(もはや)
【ウォーバーグ・ピンカス日本小型株ファンド】、
ではないわけです・・。
15年の月日の中で、
当該ファンドの場合、
運用会社である
ウォーバーグ・ピンカス・アセット・マネジメントが、
クレディ・スイス投信と合併したり、
途中、
『クレディ・スイス日本小型株ファンド』に
名前が変わったりして、
現在の
【アバディーン・日本小型株ファンド】という
名前になっています。
この記事の冒頭で、
すべての新発売ファンドは、
【既存のファンド】になると言いましたが、
いったん
【既存のファンド】になってしまうと、
よほどの特性や、
よほどの良い成績がない限り、
運用会社や販売会社は、
【新発売の投資信託】に忙しいため、
はっきり言うと、
忘れ去られてしまうわけです・・。
2012年に売り出した、あのファンド。
2009年に販売した、あのファンド。
2003年、
あんなに一所懸命に売っていた、あのファンド。
みんなみんな、
行員の方も、証券会社の方も、
もう、忘れ去ってしまっているのかも・・。

あのですね、
マンションであれば、
『中古』になっても、
ちゃんと人が住んでいますね。
(人の営みがあります。)
そのうえでの、
『新築』売り出しになるのでしょうが、
投資信託の世界でやっていることは
もっと「あこぎなこと」だと思います。
たとえば、
既存の中古Bマンションの
保有者の尻を叩いて、
『はい、新築が出ましたよ。どうですか?』
と乗り換えを勧める。
その新築も、
しばらくすれば中古Cとなり、
また、
『今度の新築はですね・・』
と新しいモノを勧める。
またまたその新築も
たちまち中古Dとなり、
B、C、D、Eと、
どんどんどんどん
【中古のファンド】ばかりが、
本数として増えていきます・・。
『投資信託・村』の風景を
想像してみてください。
無数の棟のように立ち並ぶ
【中古ファンド】に住む
(保有する)住民はどんどん減っていき、
そのうちの多くは、
ゴーストタウン化するわけです。
つまり、
本当のマンション市場と違い、
投資信託のマーケットの醜いところは、
ファンドを【新規に】購入する、
真の意味での
新しい『参加者』が、
とても限られているということなのです。
要は、
既存のファンド保有者を、
必死に『新築マンション』に
移し替えようとしているだけ・・。
2010年に売り出した、あのファンド。
2006年に販売した、あのファンド。
2005年に売り出された、あのファンド。
2002年に売り出した、あのファンド。
2000年に売り出した、あのファンド。
1997年に売り出した、あのファンド。
1995年に売り出した、あのファンド。
1989年に売り出した、あのファンド。
1984年に売り出した、あのファンド。
実に多くの、
数え切れない投資信託が、
巨大な黒いベールで覆われ、
まるで存在しないモノのように
扱われています。
(実はあなたのすぐ近くで
今も息をしているのに・・)
なんと勿体ないことでしょう。
そして、
投資信託の世界では、
人気のあるファンドと、
成績がよいファンドが、
イコールになっていない、という【滑稽さ】もあります・・。
このような異常な状態に、
ぜったい慣れてはいけません。
まず、
私たちが出来ることは、
1.新発売のファンドを買わないこと。
そして、
2.すべての投資信託の購入時手数料を
撤廃するよう求めること。
(そうすれば、
回転売買の【動機】がなくなりますから・・)
道のりは遠いですが、
決して辿り着けないわけではありませんよ。

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