一般NISAはどうさ? 良くないさ。その五 【売るとアドレナリンが上がる編】
こんにちは。
インデックス投資アドバイザーの カン・チュンド です。
(あまり情報として行き渡っていませんが、
現状のNISA制度には多くの欠点、デメリットがあります)
さて、長年お金の相談業務をさせていただいていると、
いろいろなことを心の中で感じます。
たとえば、
金融商品を【売る】ことに対する『誘惑』は、
私たちの想像以上に根強いのだなあと思い知らされます。
(意外に思われるかもしれませんが、)
人は、利益が出ているときのほうが
『保守的』に振る舞うものです。
多少の利益が出たら、
それを「確定させたい」という意識が働きます。
○ つまりはその金融商品を売って、
ハラハラドキドキから解放されたいと願うのです・・。
仮に、NISA口座を利用すれば、
利益が出ている金融商品を売っても
【非課税】扱いになりますから、
非課税 = トク = 取りあえず売っておこう
という「思考回路」に陥るのも無理はありません。
逆に【売却】をしないと、
NISA口座のメリットって享受できないのです。
したがって、【売る】というバイアスは
(あなたが思う以上に)根強く存在する可能性があります。
(と・こ・ろ・で)
★ 金融商品を【売る】とは、
いったいどういう行為なのでしょうか?
「カンさん。何言ってるの。
利益を確定させることに決まってるでしょ!」
あのー、(言葉を返すようですが)
わたしはそうは思わないのです。
○ 少なくとも、わたくしにとって
金融商品を【売る】とは、
お金を使う【プロセス】に過ぎません・・。
??
【お金を使う用事】があるからこそ、
金融商品を「売却」するわけで、
【お金を使う用事】がないのに、
金融商品を売って、
「で、あなたどうするの?」と思ってしまうのです。
(わたしってヘンですか?)
ここから【具体例。】
あなたは毎月5万円で、
日本株式ファンド、先進国株式ファンド、新興国株式ファンド、
日本債券ファンド、先進国債券ファンドを
それぞれ等分で積立てています。
(楽天証券にて。特定口座)
そして、ボーナス月に年2回、
10万円ずつ(年20万円)を増額投資しています。
あなたは2014年から
(今やっている積み立てを)
NISA口座で行うことにしました。
年間80万円分の投資ですね。
そして、あなたは
あまり一喜一憂することなく、
2016年の年末を迎えます・・。
(NISA口座での)投資元本は?
80万円 × 3 = 240万円
あなたは2016年の終わりに、
投資信託の値段を見てびっくり・・。
「すっ、すごい上がっている!」
あなたが積立てている5本の投資信託の
時価評価額はナント、325万円になっています。
240万円 ⇒ 325万円!
「おぉー、これは非課税のメリットを使わないと損だ!」
と感じたあなたは、
5本のファンドを全部「売却」してしまいました。
(非課税の恩恵を受けるため、と自分に言い聞かすあなた・・)
さあ、ここで【質問】です。
あなたは、払い出された
325万円のお金をどうされますか?
1.家族・親戚一同でハワイ旅行に行こう!
2.(何かに使ってしまうと)複利の効果が得られないので、
325万円を用いて、特定口座から
同じ5本の投資信託を一度に購入しよう!
3.325万円を用いて、特定口座から
同じ5本の投資信託を毎月5万円ずつ購入しよう!
4.とりあえず、NISA口座の2017年の枠の
100万円分を使って、
同じ5本の投資信託を一度に購入しよう!
(残りは特定口座に入れる・・)
5.とりあえず、NISA口座の2017年の枠の
100万円分を使って、
同じ5本の投資信託を毎月5万円ずつ購入しよう!
(残りは特定口座に入れる・・)
※ 上記の例で云いますと、
5本のファンド325万円分を全部売却すると、
2014年、2015年、2016年から始める、
3つ分の「5年間」の非課税枠を使い切る計算になります。
6.何をどうすればよいか、よく分からなくなって途方に暮れる?
実は先日、
弊所の「投資の交流会&セミナー」で
上記の質問を伺ったのですが、
(4つのチームに質問しました)
解答が、
1.3.5.6.と見事に分かれました・・。
何が言いたいかと云いますと、
★【お金を使う用事】がないのに
金融商品を「売却」してしまうと、
【悩みのタネ】が増えてしまう、ということです。
ちょっとあなたの「心の中」を覗いてみてください・・。
あなたも、わたしも、
利益が出ているときに「売却」ができて、
しかもそれが【非課税】になる、というのは
なんと云いますか、
とても「気持ちがよいこと」です。
(アドレナリンが上がります!)
そして、
人は一度「気持ちがよいこと」をすると、
また、いいタイミングで売れないかなあ・・と
夢想してしまうものです。
(そうではありませんか?)
長年、コンサルティングの現場で
お客様と相対していると、
★「売る」という行為は、
悪い言い方をすると「クセ」になるのだ。
と実感します・・。
『おっ、なんだか上がってきたわ。
また売却できるかもよ・・』 という頭があると、
マーケットの動きを、
より細かく見てしまうことになります。
この、NISA口座をきっかけに、
一度、自問自答していただきたいのです。
あなたはいったい
【どんな資産運用を行いたいのか?】
もし、
お仕事やプライベートの生活を充実させながら、
低コスト、少ない労力で、気長に運用を続けたい。
という『ポリシー』をお持ちなら、
その際のキーワードは
「シンプルさ」であるはずです。
「カンさん。分かっているって。
だから、上がっていようが下がっていようが関係なく、
NISA口座ではロールオーバーするの!」
あっ、はい、
それは重々分かるのですが、
しかし、 実はNISA口座では、
★ 5年ごとの【区切りの時】に、
保有する金融商品の価格が【洗い直される】のです。
??
仮に、投資元本80万円で
『ABCファンド』を購入したとしましょう。
5年後、この投資信託の価格が上がっている状態、
たとえば96万円で
NISA口座をロールオーバーすると、
96万円が
新たな【取得価格】として認識されます。
(でも、これは何の問題もないですね・・)
そして、さらに5年が経過した時、
(原則、ここで【特定口座】に戻さないといけないのですが)
『ABCファンド』の時価が下がっていて、
69万円になっていたとします。
すると将来的に、
利益の額が膨らんでしまう可能性があるのです。
??
なぜなら、
69万円が新たな【取得価格】として認識され、
すでに【特定口座】に戻っていますから、
その後、『ABCファンド』の時価が上昇したりすると、
(80万円を投資元本と認識するのに比べて)
利益の額が増えてしまい、
将来、税金の負担が増す可能性があるのです・・。
○ つまり、NISA口座を利用している間は
「利益」が出てもらっていることが重要、なのですね。
もし「損失」が発生している状態になっても、
NISA口座では、
同口座内での損益を通算させることは出来ません。
また、NISA口座と特定口座間で、
損益を通算させることも出来ません・・。
★ そもそもNISA口座では
(利益という概念がない代わりに)
損失という概念も存在しないためです・・。
つまり、
これはとっても大切なことなのですが、
★ NISA口座とは、
金融商品に【利益】が出てくれてなんぼの仕組みであり、
(かつ、それをうまく売却出来てなんぼ、)
仮に、
自分が選択した金融商品のせいで、
あるいは、
マーケット全体が落ち込んでしまったため、
【損失】が積み上がっている状態であると、
メリット、ゼロ。
デメリット、あるある。
の状況になってしまいます・・。
(なんだ、こんななら、普通に【特定口座】で
やっておけばよかった、という声が上がる可能性も・・)
資産運用においては、
【利益】が出ることの反作用として
常に【損失】の可能性があります。
NISA制度では、
元気ではつらつとした人の顔のみを伝えて、
疲れて、落ち込んでいる人の顔には
フタをしてしまっているような、
そんないびつな情報の伝わり方が
現に存在します。
わたしはそれに、
大いなる違和感を感じる一人です・・。

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