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ETF、夜明け前・・『誕生秘話』 その1)


こんにちは。
インデックス投資アドバイザーの カン・チュンド です。

ETFという金融ツールをご紹介する際、
さまざまな「切り口」があると思います。

それは「上場ファンド」という切り口であったり、
「インデックス商品」という切り口であったりします。

しかし、ETFのアイデアはもともと、
商品(コモディティ)の世界に精通する
一人の米国人が思い付いたことなのです。

その人の名は
ネイサン・モストさん(1914-2004)

モストさん

モストさんは1977年、
当時のアメリカン証券取引所に請われ
「商品オプション部」のトップに就きます。

競争が激しい証券取引所の世界で、
アメリカン証券取引所は
上場株式数の低下に悩んでいました。

そんな中、同証券取引所では、
オプションに続いて
商品(コモディティ)市場にも
進出しようと考えたのです。


ところで、
商品(コモディティ)と
株、債券などの有価証券の違いは何でしょうか?

シンプルですね。
商品は「モノ(実物)」であり、
株、債券は「紙切れ」であります。

株、債券は、信用の上に立った
ペーパー資産なので、保管場所には困りません。

一方、コモディティは
「モノ(実物)」ですので、
保管するための「スペース」が必要です。
(もちろん、そのためのコストもかかります)

ちょっと想像してみてください。

コーヒー豆と豚肉と、
原油と金が保管されている
「巨大な倉庫」内で、

現物の取引って容易に行えますでしょうか?
(NO、ですね・・)

コモディティ取引の実態は
【先物での取引】であり、
「取引単位」や「取引枚数」も決まっています。

先物取引では、
現物を受け渡しすることはなく、
「差金決済」を行います。

つまり、実際に倉庫の中に入って、
「モノ(実物)」を移動させ、
売買するのではなく、

特定のコモディティ、特定の数量を表す
番号札】(受領書)のようなもので
代用するわけです。

たとえば、
「ガソリン100リットル 1枚」みたいな・・。
(枚は数量の単位です)

この【番号札】(受領書)そのものが
売買に用いられ、
担保にも供される・・。

じゃあ、と
ネイサン・モストさんは考えました。


「じゃあ、株式の指数を
【ひとつの番号札】(受領書)にして、

その【番号札】(受領書)そのものを、
ひとつの銘柄として市場で売買できないだろうか?」


つまり、モストさんの最初の着眼点、
―ETFに対する初期イメージは―

【ファンド(投資信託)】ではなく、
あくまでも【新種の銘柄】だったのですね・・。

実際、このような
新しい金融商品の開発は
他の証券取引所も画策していて、

1988年、フィラデルフィア証券取引所が
アメリカン証券取引所に先んじて
The Cash Index Participation(CIPs
という金融商品の申請を行ったのです。

CIPsは個別株を売買するのと同様に、
株価指数を(ひとつの銘柄として)
取引できるように組成された商品でした。

アメリカン証券取引所も負けじと
そのあとすぐ、
Amex’s Equity Index Participations(EIPs)の
申請を行います。

また、シカゴ・オプション取引所も
Value of Index Participations(VIPs)
の申請を行いました。


これら3つのツールは
ETFの原型と云えますが、
(現在のETFとの)本質的な違いは、

⇒ 指数を構成する現物の株は
【保有しない構造】になっていたことです。

現物の株を保有しないのに、
どうして指数と連動出来るかというと、
先物やオプション取引を取り入れていたため・・。

この点が、
金融業界の【縄張り?】を刺激してしまいます

特に、CIPs 、EIPs について、
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)、
そしてシカゴ商品取引所(CBOT)が、

SEC(米国証券取引委員会)に
異議申し立てを行い、
とうとう『訴訟』にまで発展してしまいます。


「あのー、
これらのツールは【証券】ではなく、
実際には【指数先物商品】であり、
先物市場で取引されるべきツールでは?

したがって
Commodity Futures Trading Commission
「米国商品先物取引委員会」が管轄すべきだ。」

というのが、
先物・オプション市場側の言い分です。

これに対して
黙っていなかったのが、

ミューチュアルファンド(投資信託)の業界団体
Investment Company Institute
「米国投資会社協会」でした。

「いやいや、これらのツールは
1940年投資会社法による
【ファンド】と解されるべきである。」と
反論したのです。

「これって、先物商品なの?
それとも投資信託なの?」


このような議論が起こること自体、
1988年に登場した『指数連動商品』が

まったく新しいタイプのツールであったことを
示していますね・・。

そんな、縄張り争いの最中、

1989年5月に、
The Cash Index Participation(CIPs)と
Amex’s Equity Index Participations(EIPs)は
上場を果たしました。


ところが、
CIPsとEIPsの仲も悪くなってしまうのです。

「EIPsって、
CIPsをコピーしただけじゃないか!」

フィラデルフィア証券取引所が
アメリカン証券取引所を
著作権侵害で提訴したのです。

しかし、実は
EIPsとCIPsの間に『差異』は存在しました。

CIPsを買い持ちして、
そのポジションを閉じる場合
(すなわち売却する場合)は、

現金による償還のみでしたが、

EIPsでは、現金か、
それとも指数の中身を構成する
現物の株式バスケットかを
選択することが出来たのです


(これって、ETFにおける
交換【Redemption】の原形・・)

しかし
CIPsとEIPsの争いも
やがて意味を為さなくなります。

なぜなら、両銘柄とも、
上場廃止に追い込まれてしまったからです。


先ほど申し上げた、

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)
シカゴ商品取引所(CBOT)が、
SEC(米国証券取引委員会)を訴えた件について
判決」が出されました。

裁判所は、
「これらの指数連動商品を、
株式と同等の銘柄であるとした米国証券取引委員会は、
明らかに拡大解釈をしており、

これら商品は、
米国商品先物取引委員会が管轄すべきである。」
と結論付けたのです。

しかし、です。

当のシカゴ・マーカンタイル取引所、
またはシカゴ商品取引所で

CIPs、EIPsのような「指数連動商品」が
上場されることはありませんでした・・。

なぜなら彼らはすでに
【指数先物】という商品を持っていたためです。

結局、CIPsとEIPsが上場していたのは
たった3ヶ月間だけでした・・。

しかし、アメリカン証券取引所は、
この種のプロダクトにニーズはある」という
感触を得ることが出来たのです・・。

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