ときに、日本の財政危機について考えてみる
こんにちは。
インデックス投資アドバイザーの カン・チュンド です。
せっかくのゴールデンウィークなので、
ふだんはあまり取り上げないことを
ここではお話ししてみたいと思います。
それは・・、
日本の【財政危機】について。
こうして↑四文字熟語にすると、
おどろおどろしい雰囲気が漂いますが、
要は、
「日本政府が負っている借金って、
ほんとに返せるの?」
という 命題 です。
まず、
用語をきちんと整理しておきますと、
「財政危機」と「財政破たん」は
まったく異なります。
『財政破たん』は「デフォルト」と呼ばれ、
国が負っている債務(元本・利息)について、
その一部、全部の返済が滞ってしまう状況を指します。
皆さんの中には
『ポートフォリオ運用』を実践する中で、
安全資産として、
日本国債を組み入れた
『日本債券ファンド』を保有している人が
たくさんいると思います。
―あるいは、日本国債そのものを、
「単品」として保有している人もいるでしょう。―
「これって、今後、大丈夫なの?」
ということが、
運用を行う者として、
いちばんの 関心事 だと思います。
実際、当オフィスの
『コンサルティング』の中でも、
この種の質問は
しばしばお客さまから頂戴します・・。
○ 日本の財政は、借金まみれである。
○ こんなものは、到底返しきれないのでは。
○ 国は財政が破たんして、
国債は紙切れになってしまう・・。
とよく言われますが、

1.日本の財政は、借金まみれである。
2.こんなものは、到底返しきれないのでは。
3.国は財政が破たんして、国債は紙切れになってしまう。
を並べて
よーく見てみますと、
実は、
1.~3.の間には
けっこうな『距離』があります。
● よく、国の『財政』を、
あなたやわたしの『家計』になぞらえて、
ニュース番組などで解説していますね。
⇒ あのさ、
55万円しか収入がないのに、
95万円の生活(支出)をしているよ。
(40万円も借金して!)
おまけに、
95万円の支出のうち、
借金の元本、利息の支払いに
25万円も費やしてさ・・。
ふつうの家庭だったら、
とっくに【破綻】しているよね。
・・はい、
それはまったく その通りです。
でも、「ふつうの家庭」と、
「国の財政」はやっぱり違うのです。
「どこが、違うのか?」
1.国には、『徴税権』があり、
その気になれば「収入」は確保できること。
2.国は、借金の『借り換え』が可能であること。
この2点です。
どちらも、
一般家庭では、考えられません。

たとえば、
2.について云えば、
ふつうの家計では、
借金には『返済期限』がありますね。
(貸し手は)安易に
『借り換え』には応じてくれません。
なぜなら、借りた本人は、
いつか死んでしまうためです。
ところが、国は違います。
お金を借りている「国」には、
原理上、寿命がありません。
国はお金を借りてはいるが、
そのお金の貸し手の大半が
『自国民』である限り、
(ことばは悪いですが、)
国家 は、
国民 を【人質】に取ることができるわけです。
(もちろん、借金の繰り延べは、
次世代の『負担』を重くするだけなのですが・・)
そう、
橘玲ふうにいえば、
< 国民は、国家を選べないわけです。>
● 話の視点を変えてみましょう・・。
以下は、
【国債等の所有者別内訳】(平成26年12月末(速報))
(PDFファイル)です。
いちばん右側の、
『国債及び国庫短期証券(T-Bill)』を
ちょっと見てみましょう。
1,023兆1,702億円 (← 借金の額ですね・・)
<では、いったい誰が
【国債】を保有しているのでしょうか?>
● 一般政府
(除く公的年金)
0.2%
● 財政融資資金
0.0%
● その他
1.0%
● 家計
1.8%
● 銀行等
34.0%
● 生損保等
19.7%
● 日本銀行
25.0%
● 公的年金
5.6%
● 年金基金
3.4%
● 海外
9.3%
ほぉー、なるほど・・。
(ところで)、
いちばんの特徴って何でしょう?
日本の国債は9割以上が、
【国内の投資家】によって保有されている、
ということでしょう。
たとえば、
半分以上が
「外国人投資家」に保有されている
ギリシャ国債では、
投資家にとって
(ギリシャ国債は)『リスク資産』であります。
国債の価格が下がれば、
あっさりと売却して、
逃げだしてしまう、という現実があります。
しかし、
国内の個人、法人、
団体にとっては、
「円建ての日本国債」は、
自国通貨建ての
元本確保型の資産です。
資金調達をしている「国」から見ると、
ある程度「長期」で持ってくれると計算しやすい、
安定した保有者ではないでしょうか。
(これが、良いことか、悪いことかは別として・・)
また、国債の
【海外投資家】の保有割合は、
現状 9.3% です。
★ 私たちが、
「ん? もしかして、これって、
『財政危機』の入り口かも・・?」
と思わないといけない局面は、
この【海外投資家】の保有割合が、
15%、20%に増加してきたとき、
と云えるでしょう・・。
(※ 海外投資家の保有割合が
どんどん増えるということは、
国内の投資家のみで、
国債がさばき切れなくなっている「証拠」であり、
また、日本国債を『リスク資産』として
保有する人が増えているということですから・・)

● 次に、見てみますと・・、
国内投資家の中で、
国債の最大の買い手は、
銀行(ゆうちょ含む)、
生損保などの『金融機関』ですね。
(合わせておよそ54%を占めています)
⇒ しかし、その資金の出し手は
誰かというと、
数多の『会社』や、
私たちの『家計』のお金です。
たとえば、
「銀行」に絞ってお話ししますと、
あなたが銀行に預けているお金、
【預金】は、
企業への貸出しがなかなか増えない中、
銀行内部にくすぶってしまいます。
何もしないと金融機関は
全然儲かりませんから、
安定的な運用先のひとつとして
「国債」を選択しています。
また、となりの橋本さんが買っている
生命保険も同じです。
橋本さんは、
毎月保険料を保険会社に支払っていますが、
「日本国債」で運用されている部分が
相当割合あるはずです・・。
あるいは、
日本銀行が保有する25.0%ですが、
これは皆さんご存じの通り、
量的金融緩和策の結果です。
これとて、
原資は銀行が日銀に預けている
「準備預金」です。
つまり、現状、
国の借金の多くは、
民間の貯蓄によって賄われている、
という『事実』があります。
そう、
民間のお金が、
国の借金を支えているわけです。

新聞の解説などで、
「国債の価格が下がり、
金利が上昇すれば、
銀行や生保がいっせいに国債を売ってくる。」
という説明がなされたりしますね。
収益を求める金融機関としては、
当然の行為でしょう。
しかし、
仮に、国債の価格が急落して、
10年物の国債の利回りが
2%とか、3%になったとしても、
どうでしょう・・・、
多くの人は、
○ 銀行から「預金」を引き上げたり、
○「終身保険」を解約したり
しないのでは・・。
ということは??
ということは、
銀行や、生命保険会社が、
いったんは国債を売却するにしろ、
ほとぼりが冷めないうちに、
また、
利回りが上昇した
『新発の国債』を購入するのは
目に見えていると思います。
【なぜなら、
あなたやわたしのお金が、
逃げ出していないのですから・・。】
あるいは、
国債の価格が急落して、
(たとえば)10年物の国債の利回りが
2%とか、3%になるということは、
投資妙味が増す、ということでもあります。
「国債を購入したい」という法人、個人が
一定割合いると考えておかしくないでしょう・・。
(巷の『破たん本』が繰り出す、
国債価格が暴落 ⇒ 長期金利急騰
⇒ ハイパーインフレ というような、
劇的で、
かつ一本調子の、
ドラマのようなシナリオがもてはやされていますが、
あまりに短絡的すぎるのでは?)
ズバリ、申し上げましょう。
★ 日本人の『資産管理・行動』が
劇的に変化しない限り、
しばらくは
預貯金等によって
国の借金は賄われることになります。
(換言すれば)
日本人の多くが
【投資】を行っていないために、
結果として、
国債が今も消化されているわけです・・。
多くの人が
【投資】に目覚め、
【投資】を積極的に行えば行うほど、
預貯金・保険商品に向かう
金融資産の割合が低下し、
国内で、国債が消化できなくなる日が
早くなってしまうとわたしは考えます。
◆ 関連記事
【ときに、日本の財政危機について考えてみる その2)】
【ときに、日本の財政危機について考えてみる その3)】

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