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マイナス金利、皆でゆっくり沈んでいく?


こんにちは。
インデックス投資アドバイザーの カン・チュンド です。

ご存じの通り、
日本では
『マイナス金利』が常態化しそうな勢いです。

10年物の国債の利回り
(= 長期金利)は現在、
マイナス0.24%!』(7月26日現在)

こんなことが
日本で起こるのは、
もちろん
史上初のこと・・。

ここしばらくは、
金利がほとんど付かない世界でしたが、

一気に
金利がマイナスになる世界に
突き進もうとしているわけです。


経済の常識】では、
2016年現在持っている
あなたの1万円は、

プラスの金利で
(ほんの少しですが)
増えるはずなので、

2021年時点では、
1万円が(たとえば)
1万200円になったりするわけです。

(お金が、
時間を味方に付けて、
ちょっとでも増えていくイメージ・・)


ところが、
【マイナス金利】が常態化してくると、

2016年現在持っている
あなたの1万円が

2020年時点では、
(たとえば)
9,920円 になってしまう、
ということが起こり得ます。

えっ!?

お金が、
時間を経ると、
減ってしまう?



ちょっと硬いことばで言いますと、

将来価値より、
現在価値のほうが
高くなってしまうということ。

(まさに「異次元」ですね)


以下、現実的には
ちょっと考えにくいのですが、

万一、私たちの預金に
【マイナス金利】が導入されれば、


あなたのイメージも、
もっと具体化されるはずです・・、

2016年現在持っている
あなたの1万円が、
2020年時点では
9,920円 になってしまうということが・・。


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【マイナス金利】がふつうになることで、
お金を借りる意欲が旺盛になり、
経済が活性化するという意見もありますが、

果たしてそうでしょうか?

貸し借りというものは、

「借りる側」と「貸す側」の
【合意】があってはじめて成り立つ

経済行為ですね。

【マイナス金利】になると、
貸す側の論理として、

「金利がまったく付かない、
もしくはマイナスになるなら、
お金など貸さないで、
そのまま置いておいたほうがよい。」

という理屈も発生します。


上記は
わたしが読んだ書籍、

マイナス金利―ハイパー・インフレよりも怖い日本経済の末路』 (徳勝 礼子 著)の中で
記されていたことです。

(実は、預金も
『銀行にお金を貸すこと』ですから、
同じ理屈になります。

万一、私たちの預金に
【マイナス金利】が導入されれば、


小口のお金ほど、
銀行に向かわず、
タンス預金に向かう可能性が高いでしょう。

これは世の中に出回らないお金に
なりますから、
文字通り「死に金」になってしまいます・・)


書籍『マイナス金利』の中では、
株価の理論価値についても
触れられています。

たとえば、
Aという会社の
10年後の収益50億円の
現在価値』は、

当然50億円より小さくなるはず・・。

ところが、
『マイナス金利下』では、

将来収益の
現在価値のほうが
大きくなってしまい、


株価は(理論的には)
際限なく上昇することになってしまいます。


つまり、
今まで当たり前に用いてきた、
【割引現在価値】という考え方が
成り立たなくなるわけです。

また、
「今はお金を使わずに、
(時間を味方に付けて)
お金を殖やしてから使おうよ。」

という、
資産運用の【前提】も
崩れてしまいますね。



2年後より、
今年の10万円のほうが
価値がある・・


ということになると、

「今日より明日がよくなるよ。」
という希望がなくなり、

ゆっくりと沈んでいく未来を
暗示されているような
気がしてきます・・。


資産運用を行う私たちにとっては、
安全資産部分の期待リターンが

【ゼロ】、もしくは【マイナス】になる、
ということですから、

たとえ、
リスク資産部分でプラスのリターンが
確保できたとしても、

トータル資産における
結果リターンは下がるわけです。

(これももちろん由々しき事態・・)


現状、
【預金】はマイナス金利には
なっていませんし、

現実的に【預金金利】そのものが
マイナスになる事態は、
わたしは想定していません。

しかしながら、
預金まわりの手数料
(口座管理手数料など)
が出現したり、

入出金、振込み手数料等を
高くすることで、
実質的に【マイナス金利】になる可能性は
高まっているのではないでしょうか・・。



そして、
実は【マイナス金利】が常態化することで
もっとも困るのは、

小口のお金ではなく、
大口のお金】です。


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あなたが今、100億円持っていると
想像してみてください。

仮に【預金金利】が
マイナス0.5%になっても、
銀行にお金を預けないと、

100億円をキャッシュで持つというのは
どう考えても
保管コスト』がかかりすぎます。

(まさかタンス預金する、
というわけにもいかないでしょう・・)


【大口のお金】を集めて
商売をしている会社も困ります。

たとえば、保険会社です。

10年ものの養老保険は
貯蓄性商品の典型ですが、
「すでに機能していない。」
と云ってもいいでしょう。

(保険会社はほんらいの役割、
「保障を提供すること」に
回帰せざるを得ないでしょう・・)


銀行にしろ、
保険会社にしろ、

『プラスの金利』の世界では、
資金の規模が大切で、

たくさんたくさんお金を集めて、
できるだけ大規模に
利ザヤ獲得を目指したほうが、

―具体的には
自分たちが運用して稼いだ金利と、
顧客に支払う金利の差(利ザヤ)―

よかったわけです。
(効率的だった。)


ところが
『マイナス金利』になると、
歯車が逆回転し始めます。

資金をたくさん
集めれば集めるほど、
(逆ザヤの危険性と相まって)

身動きが取りにくくなり、
不利になってしまいます。


では、結局【マイナス金利】で
いちばん得をするのは誰なのでしょうか?


マイナス金利下では、

お金を増やしたい
あなたの1万円は、

来年
9,990円 になる可能性がある一方、

お金を借りている人にとっては、
借りたお金の1万円が、
9,990円 になる可能性が出てくるわけです。

<ぱっと思い浮かぶ
   『借金王』って誰ですか?>

そう、
政府(国)です。


マイナス金利下では、
(同じ借金の額でも)
利息も払わず、

返済元本が減るということが
起こり得ます。

書籍『マイナス金利―ハイパー・インフレよりも怖い日本経済の末路』は、

マイナス金利は
インフレタックスと同様である。


と喝破しています。


「マイナス金利」でお金を預けるとは、
私たちの資産が目減りするということ。

これは、
インフレによって
お金の実質価値が目減りするのと
同じ理屈です。

マイナス金利以上に、
物価上昇率(インフレ率)が
マイナスになるとは考えにくく、

実際のところ、
私たちは、

インフレ率 > 金利 という
「怪しい海」の状態に
両足を浸しつつあるわけです。



インフレ率に比べ、
名目金利が低い状態が続けば、

これは【金融抑圧】以外の
何ものでもありません・・。


(金融抑圧の詳細については
 こちらの記事を参照してください)


インフレ率に比べ、
名目金利が低い状態が続き、

かつ、
『インフレ率 - 金利』の 数値 が
大きければ大きいほど、

膨大な借金をしている
国の債務が、
(実質)棒引きされていくことになります。

言い方を換えれば、
ゆっくりゆっくりと、

国の借金が
私たちの資産によって、
埋め合わされていく、ということなのです。



そこには
劇場型の【ドラマ】はありません。


国債の暴落も、
金利の暴騰も、
ハイパーインフレも
見当たらず、

昨日と同じ風が
吹いているように見えつつ、

みなが
生ぬるい海の中に、
ゆっくりゆっくり沈んでいくのです。


『マイナス金利』の著者 徳勝さんは
アベノミクスを
太平洋戦争にたとえています。

すなわち、
「デフレ脱却で高成長」という目標を掲げ、
(「大東亜共栄圏」のように・・)

真珠湾攻撃のように
「2年で2倍」という奇襲攻撃を仕掛け、

当初は株高などの戦果を上げますが、
成長率もインフレ率も上がらず、

苦しまぎれのまま戦線を拡大し、
なかなか撤退できない・・。

私たちはかつてない、
異常な状態に置かれているのです。






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