やっぱり残念な『フィデリティ・USリート・ファンドB』
こんにちは。
インデックス投資アドバイザーの カン・チュンド です。
5,000本以上ある投資信託の中で、
「コレが純資産額 堂々第一位!
あなたの周りの〇〇さんも買っているかも!?」
と言われたら、
「ちょっと買ってみる?」
という気持ちになるかもしれません。
でもちょっと待って!
たしかに、
『フィデリティ・USリート・ファンドB』は、
今日本でもっとも純資産残高が大きな投資信託です。
(2017年4月21日現在)
そして、
分配金が毎月70円も出ています!

(でも、ちょっと待って!)
分配金って、
ただ金額が多ければそれでOKなのでしょうか?
(ちょっと違うのでは・・)
【分配金】を見る際は、
そのファンドがどの程度成長しながら、
【分配金】を出してくれているかを
見極める必要があるのでは・・。
⇒ 今、この瞬間を見るのではなく、
過去からの【傾向】を時系列的に見る・・
という意味ですよ。
たとえば仮に、
ABCファンドという
「毎月分配型ファンド」があるとしましょう。
ABCファンドは毎年10%成長しながら、
【分配金】を毎年9%出してくれています!
これならスゴイですね。
ABCファンドの成長の範囲内で、
【分配金】を出してくれているのが分かります。
この場合、
ABCファンドの価格(基準価格)も上昇します。
では次のケースはどうでしょう・・。
ABCファンドは毎年4%成長しながら、
【分配金】を毎年9%出してくれています!
えっ?
この場合はどうですか。
【自分の成長以上に、
お金を分配してしまうため、
ファンドの基準価格は下がっていく一方】です。
『フィデリティ・USリート・ファンドB』も
(実は)同じです。
【自分の成長以上に、
お金を分配し続けてきたため、
ファンドの基準価格が下がっている】のです。
⇒ 基準価格 4,312円 (2017年4月21日現在)
さあ、次は
【月次運用レポート】(3月31日現在)を見てみましょう。
「まあ、これって
とっても親切なレポートではないか!」
と、わたしなど思ってしまいます。
投資信託は毎月ベースで見て、
成長する月(プラスのリターン)もあれば、
衰退する月(マイナスのリターン)もありますが、
当該ファンドは、
運用レポート『2ページ目』のところで、
今月は、『何が』原因で、
基準価格がプラスになったのか、
『何が』原因で、
基準価格がマイナスになったのか、
なんとも丁寧に(かつ分かりやすく)
図表で示してくれているのです。
たまたま3月度は、
『フィデリティ・USリート・ファンドB』が
保有する、
アメリカのREITの価格(USドル建て)が
下がってしまったため、
それが直接的な
基準価格の下落要因だったのですが、
その他にも、
こんなふうに【図表】にしてくれていますよ。
〇 配当金・利息等(現地通貨ベース)
→ プラス26円
〇 分配金
← マイナス70円
なんと分かりやすいのでしょう!
〇 配当金・利息等(現地通貨ベース)
→ プラス26円
〇 分配金
← マイナス70円
要するに、
REITの配当金などの
【入ってきたお金】以上に、
【分配金】を出しているから、
ファンドはなかなか成長せず、
基準価格が下がる要因となっているわけです。

(ところで、)
もうすぐGWですから、
ちょっと多めに現金を持っていたいですよね。
あなたは「ATM」に行って、
自分のお金を引き出します。
その際、
〇 利息
→ プラス26円
の状態で、
〇 引き出し金額
← マイナス70円
にすると、
あなたのお金は、
44円減ってしまいますよね?
『フィデリティ・USリート・ファンドB』は、
それと同じことをやっているわけです。
しかも、
『分配金』をいくらもらうのかという
決定権は、あなたの側にはありません。
あっ、でもでも、
【ファンドの成長以上に、
お金を分配し続けているのは分かっているよ。】
という人も多いかもしれませんね。
その場合は、
当該ファンドでも、
いいえ、良くないと思います。

そもそも私たちは、
自分のお金を増やしたいために、
【投資信託】を利用しているわけです。
『フィデリティ・USリート・ファンドB』の
運用レポート「1ページ目」、
累積リターン(2017年3月31日現在)の
【数字】に注目してみましょう。
客観的に見た当該ファンドの【成績】が
手に取るように分かりますよ。
当ファンドは、
アメリカのたくさんのREITに
投資を行う投資信託です。
「今年はまあまあ良かったな。」
「うわぁー、今年は良くなかったな。」
というふうに、
ファンドの【成績】を
客観的に評価するためには、
何か【評価の物差し】となるような
指標があったほうがいいと思いませんか?
たとえば、
アメリカのREITの【平均値】を示す物差しとか・・。
えっ、そんなのあるの?
はい、もちろんあります(^^)
アメリカのREIT全体の【平均値】を示す、
『FTSE NAREIT Equity REITs インデックス』
というものがあり、
これが
当該ファンドが運用する際の、
指標(ベンチマーク)となっているのです。
フィデリティ投信の『サイト』を見ると、
なんとも丁寧に、
当該ファンドが一貫して、
アメリカREIT市場の『平均値』(ベンチマーク)よりも、
成績が劣っていることを
グラフで示してくれています。
(「累積投資額」と「ベンチマーク」の差に注目!)

画像:フィデリティ投信より
https://www.fidelity.co.jp/fij/fund/focus/usr_operation.html
先ほどの、
運用レポート「1ページ目」、
累積リターン(2017年3月31日現在)の表を
見ると、
当該ファンドのリターンが、
アメリカREIT市場の『平均値』(ベンチマーク)を
2003年の運用開始から一貫して、
下回っていることが【数字】で分かります・・。
⇒ ある意味、
ここの運用会社(フィデリティ投信)は、
とても親切な情報開示を行ってくれているわけです。
〇 私たちは、ファンドの成長以上に、
お金を分配し続けていますよ。
〇 フィデリティ・USリート・ファンドBの成績は、
米国REITの平均値である
FTSE NAREIT Equity REITs インデックスに
劣っていますよ、と。
わたしなら、
(もし、わたしが「USリート」という
投資対象を求めるなら、)
【iシェアーズ 米国リート・不動産株ETF】や、
【eMAXIS 米国リートインデックス】のような、
よりコストが安く、
市場の平均値程度のリターンは
期待できる商品を選ぶでしょう・・。

| 投資信託をディープに理解する | 19:22 | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑